それにしても、大文字のBと小文字のbは理解できる。丸みを帯びている向きが同じだから。一方、大文字のDと小文字のdは解せない。丸みを帯びている向きが逆だから。それだったら、Dの小文字を同じ向きのbにして、Bの小文字を丸みの中間に棒線を引くなり何なりして、もう少し工夫すれば理にかなった形状になるのに。と、そんなことばかり考えていると眠れなくなってきて辟易。

さて私はギャンブルをやらないタチの人間である。せっかく稼いだお金を運に任せる宝くじの類やら、せっかく稼いだお金を競走馬やらボートやら自分の能力以外に任せる賭け事の類やら、店側の操作で何とでもヤラれてしまいそうなパチンコ・スロットの類まで、基本的にギャンブルには手を出さない。お金を賭けずに競馬を見ることはごく稀にあるものの。

ただ唯一、勝機の有無を把握せずに賭けざるを得ない場面がある。それはファストフードやチェーン展開している喫茶店の座席確保。あれはどう考えてもギャンブルに等しいだろう。

というのも、二階や三階に座席があるタイプの店舗。一階の注文カウンターで希望の品をオーダーし、商品をトレイに乗せ、それを持ったまま二階やら三階やらへと上がるタイプの店舗ってあるよね。あれのこと。

二階やら三階の座席が空いているかどうか未確認の状態で商品を注文し、階上へと移動。もし万が一、上階で座席が空いていないことが判明した場合、どう処すればいいのか僕は解していない。立ち食い立ち飲みの様相で、片手でトレイを持ち、もう片方の手で飲み食いをするのだろうか。それとも、見ず知らずの他人にすり寄って行き、半ば強引に相席を申し入れるのだろうか。まさか、スゴスゴと階下へ移動し、注文カウンター前に仁王立ちし、「座席が空いていなかった故、お持ち帰りにチェンジしてはもらえないでしょうか?」と物申すのか?

コインパーキングの如く、『空』やら『満』やらの表示が一階にあれば、「嗚呼、座席が空いていないから別の店にしよう」だとか、「今日は持ち帰りにしよう」という事前判断ができるのに、階上へ移動してなんぼ、座席を確保できるか否かは、己のギャンブル運に任せよと言わんばかりの、あのサービス形態には閉口してしまう。

有名大学を出ているような優秀な人ならば溢れる叡智が働き機転が効くもんだから、「先に階上に移動し、空いている座席を確認してから一階に降りて注文すれば?」と、涼しい顔で指摘してくれるに違いない。あほんだら。仮に確認した折に1席しか空いていなくて、注文カウンターに4~5人が並んでいたら、その時点でアウトじゃあないの。それなら事前に諦めもつくが、3席の空きを確認した後、注文カウンターに3人が並んでいて、私が4人目という状態なら判断に迷うじゃあないの。

空きが3人だから実質、僕は座席には座れない計算になる。が、注文カウンターに並んでいる間に客がひとり、上階で飲食を終え階下に降りてきた場合、俺も座れるやん、という判断ができる。が、もし万が一、空席確認の際にそいつがトイレに立てこもっており、そこから出て来た客だった場合、空席が3席という状況に変化は生じない。「4席目が空席になったから列の4番めの俺は座れる!」という刹那な判断がぬか喜び、先走り、フライングになってしまう。ウキウキして階上へ移動するも、座る席はどこにもなし、という現実を突きつけられ、片手にトレイ、もう片方の手で飲食、というスタイルを余儀なくされてしまうじゃあないの。

ちなみに、「先に階上に移動し、空席を確認した時点でテーブルの上に私物でも置いて席を確保しておけば?」という意見が出るのも目に見えている。しかしだ、もし万が一、注文カウンターに並んでいる先客の誰かが、事前に階上に移動し空席確認を済ませていたとしよう。そこへだ、後発の僕が妙な私物、たとえば引きちぎったシャツのボタンであったり、つい先ほど道中でもらったポケットティッシュであったりを置いていた場合、「誰じゃい、後発のくせに姑息に私物など置き腐って。こいつは俺が先に目をつけていた女。後から来たお前が手を出せる女じゃあない」と吠えられて、胸ぐら掴まれて殴られる光景が容易に想像される。だから、私物を置いての座席確保は禁物だ。痛い目を見るからやらない。

そんな状況は単独で店を訪れた場合の話。仮に二人で店を訪れた場合も、また質の違う問題をはらんでいる。たとえば後輩と二人で店を訪れた場合、どちらか一方が先に空席を確保するというクレバーなやり方が考えられる。が、しかし、この手法もまたリスクがあるのだ。

僕が階上へと移動し座席を確保。座席に鎮座し、注文は後輩に任せきる。二人分の商品をトレイに乗せ、さも重そうに階上へと移動してくる後輩。尚も鎮座する先輩の俺。周りの目はどうだろうか。この先輩は腐っとる。偉そうに座席にふんぞり返りやがって、何もかもを後輩に任せっきり。きっと職場でも、後輩に対し横柄な態度を取ってるんだろう。いかにも上から目線で指示など出しそうな輩だ。人間のクズを絵に描いたような野郎だな。アホンダラだな。と、誹謗中傷されるに決まっている。人間としての品格を全否定されるに決まっている。これまで築いてきた地位も名誉も、すべて消失し失脚の憂き目に遭うに決まっている。

じゃあ、ということで、階上で後輩に座席を確保しておいてもらい、先輩の俺が注文カウンターで商品をオーダーするとしよう。二人分の商品をトレイに乗せ、さも重そうに階上へと移動することになる。周りの目はどうだろうか。この先輩は貧弱だ。後輩にコキ使われている。あまりの無能さに、職場でも立場が逆転し、後輩から指示を受けて働く何の役にも立たない給料泥棒に違いない。人間のクズを絵に掻いたような野郎だな。アホンダラだな。と、見下し嘲笑されるに決まっている。これまで築いてきた地位も名誉も、すべて消失し失脚の憂き目に遭うに決まっている。

これらのパターンを考察するに、やはりギャンブルというものは危険なものであり、一歩間違えれば、地位も名誉も失ってしまうほどリスクが高いということがわかる。
だから僕は基本的に、飲食スペースが二階やら三階やらにある店舗には入らない。店舗が一階にしかない店で且つ、無色透明なガラス張りで店内が一望でき、間違いなく座席が空いていることが確認できる良心的な店舗にしか入らない。つまりは、余計な賭け事はしないということ。たかがコーヒー1杯で、苦い思い出は残したくない、という強がり。嗚呼、今日もなかなか生き辛い世の中だこと。

デタラメだもの。

20190501