大きな不運などに見舞われないように、日々、ちょっとした不運をつまみ食いしながら生きているほうが、平々凡々で穏便な、波風の立たない生き方ができるのではと思ってはみるものの、それら不運、いわゆる、『ツイてない』ことが連発、頻発するような時期って、ありはしないだろうか?

『モテ期』といったような単語があるが、こういった期間のこと、『運の尽期(き)』と呼ぼうじゃないか。

とまあ、それはさておき。

そのツキのない日の始まりは、自分の部屋のLEDシーリングライトが灯かなくなったことに始まる。

LED電球といえば、約40000時間の寿命を持つことで知られる。つまりは、1日5.5時間使ったとしても、約20年間使える計算になる。

それが何と、購入後、一年三ヶ月で、その寿命を終えやがったのである。

初期投資は高くつくが、通常の電球よりも、電球の買い替えなどのランニングコストを考慮すると、LEDのほうがはるかにおトクですというような誘い文句にまんまと騙され、何のことはない、一般的な電球を使用したシーリングライトよりも、早よ潰れてるわけである。

今ではただただ初期投資に蹴躓いた、大バカ者である。

しかも、この一年三ヶ月というのがミソで、メーカーの一年保証が天晴れなほど見事に、切れてしまっているのだ。
メーカーに故障の旨を伝えると、

「一度、回収させていただき、その後に、修理のお見積りをご提示いたします。ただ、修理の金額が、購入額を上回ってしまうケースもございますので…」

って何かい?ほんだら、ワシは、メーカーさんにシーリングライトを奪われ真っ暗闇で下らん文章などを、パチパチと打ち続けることになり、その果てに提示された見積もり金額が、驚くような価格であった場合、修理を断念し、再び我が家へライトが戻ってくるのを待ちつつ、たとえ戻ったとしても、そいつは使えない代物なので、同時平行で、再びLEDか、もしくは一般的なライトを購入すべく、電気屋へと向かわねばならないことになる。

こんなアホらしいこと、あるかいな。

あまりにアホらしくなり、今、部屋には、大昔から使っている、ごくごく旧式の一般的な電球を用いたシーリングライトを臨時措置で使用している。

しかもこいつは、思わず電球の曲線部をヨシヨシしたくなるくらいに、煌々と僕を照らしてくれているもんだから、余計にLEDの野郎!と、憎しみが湧いてくるのである。

このLEDシーリングライト故障事件を皮切りに、その後、昼食に入ったうどん屋の、無料でトッピングできる天カスに、どう見てもゴキブリに見える物体が混入していたり。

出勤時、家を出るときは、穏やかな曇り空だったはずなのに、わずか十数分間乗る通勤電車から降りた後、地上に出てみると、久しく見なかったぞこんな雨、というほどの豪雨に見舞われたり。

しかもその豪雨で会社に着いた刹那、即座にお客様のところへ出なければならず、ヨレヨレの折りたたみ傘一本をデスクから取り出し、引き続き、豪雨の中に勇猛果敢、出ていかなければならなかったり。

で、案の定と思いながらも、お客様のビルから出てみると、虹が出とるんじゃないかと思われるほどに、美しく晴れ渡っていやがって。

それだけじゃない。
事務所でコピーを取れば、急ぎの時に限って、紙詰まりを起こしやがるし、さらに急ぎの時に限って、用紙切れになりやがり、給紙トレイに紙がないだけならまだしも、用紙の在庫そのものが事務所になくなってしまっており、発注しなければならない事態に巻き込まれたり。

なんなんだ、この不運の連続は。

家から徒歩数歩で買えていたゆえ重宝していたタバコの自動販売機が、ある日、何の前触れもなく撤去されていたり、JR鶴橋駅と近鉄鶴橋駅の乗り換えが上手く行かずに、混雑の中、改札機を延々とピコンピコン言わせてしまったり、嗚呼、もうダメだ。

まあ、しかしそこは、小さな不運を消化する日々ゆえに、反転すれば好機が訪れるというもの。そこは、信じてやまない。
辛い登りを終えれば、お気楽ご気楽な下りが待っている。
やまない雨はない。

それら小さな不運が、一挙に押し寄せたある日の夜。

「これは次の日、とてつもなく善いことが起こるんじゃなかろうか?買ってもいない宝クジが当選するとか、見知らぬどこかの大金持ちさんが、間違えて僕の貧相な銀行口座に、大量の預金をしてくれるとか、昼食のうどんにそばが一本入っているとか。そんなことが起こりそうな気がして仕方ないぞ!眠れないぞ、興奮して!」

と、やたらめったら気合いを入れて眠ったあくる日。

胸をドキドキと高ぶらせ、家を出る。
ラッキーが舞い降りてきそうで、妙にソワソワして、やたらキョロキョロしながら、通勤の電車に乗る。
今日は、お客様訪問のため、直行。
そう、直行。
直行。
直行?

「し、しまった…。直行の予定組んでるのに、スーツの上着、事務所に置きっぱなしだ…」

そんな淫らな格好では、到底、お客様のところへ訪問できないので、渋々事務所に一瞬立ちより、スーツの上着だけを拾い、お客様のもとへと向かう。

普段より少しばかり早く家を出たはずが、事務所を中継したために、アポイントの時間に遅刻しそうになり、全力疾走で向かう。

高校球児ばりに垂れ流れる汗を拭いながら、なんとか間に合い、商談。

のはずが、資料を一部忘れてきてしまっており、どうしてもその日に必要な書類のため、笑顔で、

「とんぼ返りして、すぐに取ってきまーす!」

と言い残し、お客様ビルと我が事務所を二往復。
灼熱の炎天下の中、合計一時間二十分も歩いたことになる。

この不運のあとには、絶対に好機が訪れると信じてやまない僕は、ここまでツキがない事態に見舞われまくっていながらも、次の一手を期待しまくり、引き続き今もなお、ほくそ笑んでいるのである。

もうそろそろ、注文したうどんの中に、そばの一本でも入っていてもいい頃だぞ。

デタラメだもの。

20130815