ほら、たまにいる、あの、話してる最中に、ちょいちょいボディタッチしてくるタイプの女性。
あと、会話してるときに、妙に顔や身体を近づけてくるタイプの女性。

なんとも、苦手だ。

まず初めに断りを入れておくが、だからといって、男色というわけではない。男だから女だからという問題じゃなくって、人としてどうかと思うからである。

「今日、午後から雨みたいですねー」
「いやだぁ~」

そして、ボディタッチ。なんで、ここでボディをタッチしてくるのか理解できない。

「地球って丸いんですねー」
「いやだぁぁぁ~」

そして、ボディタッチ。なぜに身体を触ってくるのか、全くもって理解できない。

「最近暑くなってきましたねぇ。このまま続くと12月はどれだけ暑なるかわかりまへんで!」
「いやだぁぁぁ~」

いやいや、そこは、なんでやん!やろがい。

と、なぜにあんなにも頻繁に、腕やら肩やらを触ってくるのか、理解ができない。

そして、何が嫌かってえと、そういうタイプの女性に身体の一部などを触られてるときの、男どもの、緩んだ表情、ニヤけた表情、弛んだ表情、腑抜けた表情、あれを数々見ていると、自分だけはそういう立場になるまいと、気を引き締めるってもんだ。

もっと狡猾な男にいたっては、そうやって、いやだぁ~ってな具合に、ボディをタッチされた刹那に、恐らく心の中では、むはぁ~ん、とか、ほにょ~ん、とかって心持ちになっているだろうにも関わらず、俺はこういうことでは心をかき乱されないタイプの、どちらかというと、侍気質の男ですから、だから、微動だにしませんぜ、お嬢さんよ、みたいな角ばった表情を捏造しやがる。

もう、そういうものを数多見ていると、自分だけは、ボディタッチの被害に合うまいと、またしてもコミュニケーションの渦から遠く遠く離れ、やはり自分は、山中奥深く、小屋の中にでも閉じこもり、木製のリコーダーなんかをひとり孤独に、エイヤエイヤと作り続けるほうが、何より向いているのではないかと黙想してみたり。

あとは、そう、話をするときに、顔や身体の距離を縮めてこられるのも、閉口してしまう。

「今回の企画、どうしましょうか?」
「えっ?どれどれ?」
「あっ、いや、この企画書ですけど」
「ん?あっ、どれどれ?もっと見せて?」
「いやいや、この机に置いてる資料ですよ」
「あ…ん?あっ、よく見えないわ、ん?どれ~?」

そんなに近寄るかい?

って、まぁ実際には、ここまで極端なお嬢さんはいらっしゃらないにせよ、なんと申しましょうか、この地球、この広い大地、果てはこの宇宙空間、なぜにそんなに、窮屈になさる。

普通はね、愛し愛されしているような関係でない限り、そない近くに寄ることもないでしょうが。
そういうサービスのお店に行けば、お仕事として応対してくださるお嬢さん方が、そういう距離感でもって接してくれるやも知れませんが、それ以外でね、そんなに人間が自分の近くに寄るなんざ、想像もせずに過ごしているわけで、それがいきなり、グググッと来られた日にゃ、まるで、同じ極の磁石を近づけたときのように、反発し、身を遠ざけてしまうわけだ。

「タダより高いものはない」とはよく言うけれど、女性がそんな有料サービスの如く男に接してくれることなんて、土台あり得ない話で、そうなってくると、その奥に潜んでいるものは、策略、戦略、陰謀、数限りなく、そういった思惑が隠されているに違いない。

もしかすると、人生のある時点で、とあるお嬢さんから、請求書が届き、その明細には、多額のボディタッチ料金が計上されているかもしれない。

ボディタッチを気安く甘んじていると、果てには命を奪われることだって、あり得ることとして、容易に想像がつく。

なので、国家レベル、いや、宇宙レベルの陰謀に巻き込まれないためには、世に渦巻くボディタッチの誘惑には、乗らないことである。

世の男たちよ、マトリックスのキアヌ・リーブスの如く、次々襲いくる、ボティタッチをかわそうじゃないか。

ただし、幾度となくボディタッチをくぐり抜けてきたパイオニアからのアドバイスだが、女性のあの陰謀という名の行為をさらりっとかわした瞬間、つまりは想像して欲しい、女性が「もぅ~」なんて照れた素振りで、こちらの肩などを触ろうとする試みを、身を反発させ、かわした次の瞬間、陰謀が敗れた女性から受ける、鬼のような冷酷な視線。

その目はまるで、この根性なしのクズ男が!
その目はまるで、この甲斐性なしのロクデナシ男が!
その目はまるで、この虫ケラが!

と、こちらに、懇切丁寧に伝えていただける結末と相成る。

そして、ズタボロに引き裂かれ傷心し、怯えきった心でもって男は、やっぱりボディタッチや距離を縮めてくる行為は、女性の陰謀、策略であったことに、改めて気づかされ、そして、その計略が破れた後の女性は、女性本来の恐ろしさを、まざまざと見せつけてくることを知る。

それに打ち勝てない男性は、ぜひ、ボディタッチの誘惑の餌食になっておくことを、強くお勧めする。

デタラメだもの。

20130706