朝の通勤なんていうと、誰しもが鬼のような形相で、階段を上り下り、閉まりかけの電車のドアに駆け入り、人にぶつかろうが、足を踏もうがお構いなし。そういったドタバタが日々繰り広げられているわけで。

これはいたしかたないですねぇ、朝ですから。

なんといっても、行きたくもない会社に、やりたくもねぇ仕事、そんでもって、起床時のお布団は、なんとまぁ優しいことやら、ヌクヌクと我々を包んでくれるわけで、そりゃ起きたくもねぇっつうの。そりゃ、お布団の中に後ろ髪を引かれまくりなわけで、一分一秒でも、その温もりに包まれてたい。できれば、このまま現実なんか無くなってしまえ!って具合に、朝の動きも鈍くなる。

そうして気づけば、この電車逃してなるものか。逃せば遅刻。朝の朝礼に遅れてしまって、仕事が始まる前から、たちまちカミナリ。それはイヤだ。それは避けねば。そうなりゃ仕方ない、全力疾走だ、バカ野郎。

と、そんな繰り返しなわけですね。

まぁ、朝早く起きて、優雅に朝食などを召し上がり、ゆったりのんびりと会社に出勤できるような紳士淑女の方々は、何らかの実の能力者かと思われますので、ぼくのようなクズ野郎とは、住む世界が違うといった解釈をしておきましょう。

で、事の本題、何が理不尽かと申しますと、朝の通勤時ですわねぇ。改札ですわねぇ。ぼくはめったと当事者にならないわけですけども、よくよく目にする理不尽があってですねぇ、それは何かと申しますと、

駅の自動改札機の不具合に見舞われその他大勢の人々から凍てつくような冷たい目で睨みつけられ恨まれる悲しき不運な運命を背負った人

のことです、はい。

どういう事態かといいますと、ほら、あの、駅の自動改札機ってやつ、たまに、不具合を起こして、「正しき人」を通さんとする時って、ありますやんか?

なんというか、とある男性、まぁA氏としましょう。A氏が、平常通り、電車を降り、人の波にもまれながらもようやく自動改札機前。
んで、普段通りに定期を通す。すると、普段通りの所作にも関わらず、自動改札機が、ビコンビコン!と反応し、ゲートがバシン!と閉じられる。

まずここで、平常通りのこと、つまりは無意識レベルで動いていたA氏は、何が起こったのか事態が飲み込めず、ゲート内でしばし狼狽。

そしてさらに、自動改札機とは何のトラブルもなく通過すること、が平常になっているその他大勢の人々も、何ら疑わず、そのゲートを通過しようとする。

が、そこには、出口を阻まれたA氏の姿。

詰まる、詰まる、ゲート内が、詰まる。

これはまるで、ところてんを押し出す用具の出口が塞がれ、用具内がところてんで詰まりまくって、てんてこ舞いになってしまうが如く、ゲートが詰まりに詰まって、消化不良。

で、やっかいなのが、人間の恐ろしいところ。
ここで、大衆は皆、A氏を「どんくさい・おっちょこちょい・のろま・うすのろ・クズ・アホ・ボケ」といったレッテルと共に、睨むわけです…。

朝のラッシュ時、もちろん皆々様、一様にお時間に迫られて行動していらっしゃることは百も承知。ですが、A氏、なんら悪くないわけです。完全に自動改札機が悪いんですもの。
だって、その冷ややかな目線の最中、やや冷静さを取り戻し、自身の定期を、もう一度、入り口側の挿入口に差し込めば、何のことはない、平常通りゲートが開き、出られるんですもの。

となると、完全に、少しばかり前のトラブルは、自動改札機の仕業じゃねーの?なのに、なぜにA氏に怒りの矛先が…?

とまぁ、A氏からすると、恐ろしく理不尽な事態に見舞われるというわけですよ、朝も早よから。大勢の突き刺さるような視線を一身に受けて。

なので、人々よ、ここは一旦冷静になって、朝も早よからA氏を責めるのだけは、やめましょうよ、と。ぼくは言いたいわけです。全てを自動改札機のせいだと、受け止めましょうよ。A氏を責めても、朝の貴重な時間は返ってきませんよ。

そんな風な平和でのんびりした感情を朝から抱きながら、本日も、電車を一本乗り過ごし、出発時点から遅刻が確定してしまっているぼくが、今日も自動改札機をくぐりますよ。

あっ!そういやぼくも、東京出張後など、関西で使用の「Pitapa」と、関東で使用の「Pasmo」を同じ定期ケースに入れたまま、朝の自動改札機を混乱させ、挙句に、ビコンビコンとエラー音を鳴らし、ゲートを閉じられ、数名に白い目で見られる経験、あったなぁ。

「そない怒らんでも…」

と、小声でブツクサ言うた記憶がございます。
これは理不尽なのか不注意なのか。ともかく、自動改札機付近では、イライラせぬよう、清々しい気持ちで、ゲートを通過しようじゃありませんか。

自動改札機のほうも、ゲートだけに、人々に悶々させたくないはずですよ。と、まぁ、くだらない。

あと、何が理不尽かっていうと、某大手ハンバーガーチェーンのドライブスルー。

車の窓を開けて、マイクに向かって、さぁいざ、声が裏返らないように、「え?はい?」などと聞き返されないように大きな声でハッキリと、などと、気持ちを引き締めてさぁ注文ってタイミングで、

「季節限定の○○バーガーはいかがでしょうか?」

と、頼みたくもねぇ限定商品をレコメンドしてくるの、やめてもらえないでしょうか?
元来のチキン野郎のぼくみたいな小心者は、人のススメを断る勇気とか、そういった類の横暴なことができませんで。なので、なんて言っていいのやら、困りに困った挙句、

「あっ…、じゃあそれで…」

などと、押しに負けて注文してしまうこと、しばしば。

ぼくは、シンプルなバーガーが食べたくて、ここへ来たんですの。その、季節限定のイロモノに寄せられて参ったわけではないんですの。

と、元来食べたいものを、食べ損ねるような、そんな押しの弱い日々を過ごしてなお、悔いなし。

デタラメだもの。

20130211