これ以上、言うてええのんか迷うわ。という話なんだけれども。
あと、それに加え、いやいやなんでそんなことできるの、まっとうに育てられてないの? という話へと展開しようかと思っている次第で。で、そこから、「いや、まだ続くんかい、この話!」っていう話で進めてみようかと思います。

飲食店でよくある光景なんだけれども、お店の混雑時、ホールの店員さんが忙しなく動き回っているとき、ありますよね。ただ、こちとらの席では、もはや数分前にビールジョッキが空っぽになり、「次、ビール頼むときに、コレとコレとアレとアレと、あっ、ソレも一緒に頼みましょ!」と作戦会議もとっくに終了済み。

ただ、店員さん、忙しなく。周りのお客さんは、忙しそうな店員さんに対しても容赦せず、忙しないのはそっちの事情、こっちは早よ注文したくて仕方がないねんと言わんばかり、語気を荒めて呼び止めるや、やや怒鳴り気味に注文したりする光景がチラホラ。

まぁ、店員さんも忙しそうやし、無理やり呼び止めて注文するのも品がない。手が空いてそうな店員さん来たら言いましょか。と、空っぽのジョッキを眺めながら自分たちを宥めながら。

ただ、さすがに10分以上が経過してしまったら話は別。そろそろ店員さん呼び止めますわと、店内を凝視。もう、通過しそうになった店員さん誰でもいいから呼び止めて、早よ注文しないと場が白ける。そう思い「すんませーーん!」と声を張り上げる。

いかにも忙しなさそうな店員さんが来てくれた。

「はい?」
「あの注文いいですか?」
「どうぞ」
「ええとですね、生ビールふたつと、それからコレと、あとコレと、でアレとアレと……」

店員さん、あまりに忙しないためか、注文を受け付ける機械みたいなやつを持たずに、当方のオーダーを聞き取っている。このパターン、危険が潜んでいるのだ。

店長クラスで仕事がバリバリできる人なら、いちいち機械に入力せずとも、お客さんの大量の注文を脳に記憶できて、それをキッチンのスタッフに正確に伝えられる。もはや道具に頼らなくとも業務を遂行できるスキルを持ち合わせた人のパターンだ。

一方、それほど大量の注文が一度にくることはないだろうと高を括り、また忙しさも相まって、さらには自分の記憶力を過信して、機械を取り出すことを辞したうえで注文を聞き取ってやろうという勇んだ野郎のパターン。

後者の場合、必ず注文の聞き漏れが発生する。頼んだやつのうち、必ずどれかはこない。そうなってしまうと次に気がかりになるのが、注文を聞き漏らしたがためにそもそもオーダーが通っていないパターンか、それとも注文は聞き取りあとあと機械に入力したものの、それをキッチンに伝え忘れるなどし、オーダーだけが通ってしまい品が運ばれてこないパターン。後者の場合、しっかりと請求はされる。そして、レジでモメる。レジが混んでいるときは、他のお客さまを待たせるのも品がないし、「まぁ、二品くらいやし、しゃあないか……」と泣き寝入る。そんな悲しき顛末が訪れる。

だから、機械は絶必で取り出して欲しい。取り出したうえで注文を聞き取って欲しい。が、相当に忙しいのだろう。無理は申せぬ。当方、10分以上も注文ができずにいたがために、注文することそのものに飢えている状況下。もはや機械の有無は問うまい。

とのことで先のセリフ、「ええとですね、生ビールふたつと、それからコレと、あとコレと、でアレとアレと……」。

ちょっと待った。この段階まで注文したところで、店員さんの奴、内心、「あれ? 思てたんとちゃうなぁ。ビールおかわり、くらいで呼び止められたと踏んでたんやけども。こいつら予想外にフードのオーダー出してくるやん? 機械出さな覚えられへんやん……。でも、いまさら機械取り出すのも奇妙やし、ましてや機械に頼ろうと決めた瞬間に、今まで脳内で覚えていた注文内容、たぶん忘れてしまうやん。どうしようもでけへんやん。もう手遅れやん」と、思ったはず。

なぜなら、表情が一気に曇り始めたからだ。

いやいや、こっちが気を使わなあかんこと? せっかく忙しない状況のなか、この卓で立ち止まってくれたわけやん。機械出したら済んだ話やん。どうしたらええの? このままあと数品、注文言い切ってしまいたいんやけども。もう、僕、覚えられませんねんってな顔しはじめてるやん。俺の表情から、白旗を感じ取ってくれ、みたいなってるやん。どないしたらええのん? 言うで言うで、注文全部、言うてしまうで。機械出さなかった自分自身を恨みや。いやいや、そんな表情されたら、これ以上、言うてええのんか迷うわ。

結局その夜、イカの塩辛とポテトサラダが卓に運ばれてくることはなかった。

そんな風な店員さんに対するマキシマムな配慮を持ってして、不運な結末を迎えている今日この頃ですが、常々疑問に思うことがありまして。

それは仕事の場面でよく遭遇するシーンなのです。やれデザインしたりやれ文章を書いたりする仕事に従事しているもんだから、よくお客さまから修正指示というものをもらう。それは、間違っている箇所の訂正、というようなものではなく、「もうちょっとここを丸にして欲しい」だの「ここを『ワタシが』じゃなくて『アタシが』にして欲しい」だの、作ったものをお客さまの要望通りに変形していく作業ですわね。

まぁ、ありがたいことに、常時20~30本近いお仕事に携わらせていただいておりまして、ご担当者さまともなると一日に20人近くの人とやり取りすることなど珍しくもなく。ともなると常日頃、自分が誰の何の仕事をしているのかすら見失ってしまうような過酷な状況におりまして。まぁ、それは楽しくやらせてもらっているのでいいのですが、そこで珍妙な場面によく出くわすわけです。

電話が鳴る。

「あ、もしもし?」
「アホンダラ代理店の阿呆駄羅王と申します。えっとですねぇ、このオレンジの四角形をですねぇ、赤色の丸に変えて欲しいんですよぉ」

いやいやなんでそんなことできるの、まっとうに育てられてないの?
ちょっと待って。誰? 誰の何? 誰の何の仕事のどの部分のオレンジ?

ある程度常識を欠いた私ですら、電話口の相手が今、自分が話したい用件である仕事に取り掛かっているとは限らないこと、たとえ取り掛かっていたとしても、相手が自分と同じ資料を見ている可能性は著しく低いこと、たとえその奇跡が起こったとしても、その刹那、同じオレンジの四角形には着目していないであろうことくらいは容易に想像ができる。

きっと、子どもでもできる。

どの案件のことかくらいはまず伝えられるはず。資料の説明をしたいから、手元に資料を用意して欲しい旨のお願いくらいできるはず。資料内のどのオレンジの四角形の部分かくらい、紙面の右端だの中央下あたりだのと説明できるはず。そんなこともできずに、よく大学卒業できたね、よく結婚できたね、よくお子さんを育てられるね。と思う人が、社会には実に多い。忌々しき問題だ。

あと何でしたっけ?
あっそうそう、「いや、まだ続くんかい、この話!」という話ですわ。

文字数も多くなり過ぎましたし、どうにも文章の精細を欠いている様子ですし、もしこれ以上、ダラリダラリとこの口調でお話を続けてしまいますと、何より読者さまの胸の内で、「いや、まだ続くんかい、この話!」と思われてしまうこと不可避。そろそろこの辺で、話を締めさせていただきたく。私、オレンジ色の長方形を修正する作業が残っておりますので。

デタラメだもの。

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