デタラメだもの

デタラメに生きる。デタラメに暮らす。薄暗い世の中をデタラメに生きるための処世術、バイブル。エッセイです。

2016年07月

調子に乗って話を盛りすぎると、ジェンガのブロックが崩壊するよ。『デタラメだもの』

大阪人だからだろうか、話を大きく盛ってしまうクセがある。特に、人と会話していて調子が良く、ウケにウケてる状況なんかになると、もっと笑いをくれ、もっと笑いをくれと貪欲になり、話をどんどんと盛って行く。脳内の別の自分が、「おいおい、そんなに話を大きくして大丈夫かね?」と、さりげなく心配してはくれるものの、「大丈夫、大丈夫、笑いは一期一会、この瞬間を逃すと二度と来ない。逆を言えば、この瞬間だけで終わるもの。話なんて、盛ったほうがおもろいやん」と、その心配を焼き払い、さらに大げさな話を続ける。

他人のエピソードなどを語っている場合には、あくまで見聞き知ったことを語っているだけなので、どれだけそれが現実離れしていようが、話の手離れが良い。最も厄介なのが、自分のエピソードを、大いに盛りに盛って語ってしまったとき。

その昔、音楽をやってる連中たちと某家に集い、鍋をつついたりお酒などを呑んだりしている最中、初対面の若手と語り合うことになった。彼は即座にこちらを慕ってくれ、兄貴、的な視線を送ってくれる。何を言うても響く。何を言うても感銘を受けてくれる。こちらの音楽に対する姿勢なんぞにも、大いに尊敬の念を示してくれるじゃあないの。
もとより、音楽に関しては雑食のワイ。偏ったジャンルに固執せず、どんな音楽でも柔軟に溺愛できる姿勢が彼に感銘を与えたらしく、ヨイショと持ち上げられ、持ち上げられ、気分よくなったワイは、「まぁ、こんな雑多に音楽を貪った結果、CDも集めに集め、今じゃ、家のラックに3,000枚くらいはあるよね」などと話を盛ってしまった。

こういうケースでひと言、言っておきたいんだが、こちらが明らかにネタと分かる数値だの距離だのを使用した際は、即座にそれを、ネタだと受け止めて欲しいのです。そういうの、関東の人には一切通用しないのは、なんとなくの経験上、理解しているし、こちらも傷つくのが嫌なので、めったと使わないが、そこはせめて関西人、ちゃんとネタはネタとして受け止めて欲しいのです。

ところが、彼、「さすがっすね! 兄貴! 今度、兄貴の家に遊びに行かせてくださいよ!」と来やがった。CDが3,000枚あるということを真に受け、そして、兄貴の凄さの証明が、家に3,000枚のCDがあることだという、僕を尊敬するひとつのファクターとして、CD3,000枚をコミットしやがった。

ということは、もし、彼が家に来たとして、3,000枚のCDが無かったとする。そうした瞬間に、兄貴への尊敬やら畏怖の念やら憧れの眼差しは消失してしまうということになるわな。ブロックゲームのジェンガで言えば、根底で上部の重みをズシリと支えている一枚のブロックを、問答無用に引き抜かれることになるというわけだ。
そんなアホな。家に3,000枚もCD、あるかいな。せいぜい、あっても200枚やわ。話を盛り上げよう思うて、15倍、盛っとるねん。家来るとか言うなよ。そんな殺生な話、あるかいな。

もちろん、彼を家には呼べない。彼は家に来たがる。「家、行きたいっす!」の話が持ち上がる度に、適当なことを言って誤魔化す。バルサン焚いてるから無理だとか、親戚一家が泊まりに来てるだとか言うて。
そのうち、それも面倒になり、彼とは会わんようになるわよね、自然の流れとして。疎遠になるわよね。彼、元気にしてるのかしらん。生息さえも知り得ない関係になるわよね。誰のせい? 話を盛った人のせい? そない殺生な。

そういえば、幼少の頃、話を盛ったことで殺されかけた経験もある。

当時、ミニ四駆なるレーシングカーの模型が流行し、キッズたちはこぞってそれを手にし、熱狂していた。
ミニ四駆というのは、いろいろな車種のラインアップがあり、マシンを構成するパーツがケースに入って販売されている。買いたてのキットは、標準のパーツしかセットされていないので、いわば、生まれたての状態。それを組み立てて、コースにマシンを持参し、走らせ、スピードを競いながら遊ぶ。

ところがこのミニ四駆、モーターやらタイヤやらホイールやらベアリングやらシャーシやらを強化できるアイテムが単独で売られており、それらを購入し、本体を改造していくことで、どんどんとスピードが速くなっていく。改造すればするほど、自分のマシンが強化されていく。そのため、キッズたちは、より最強のパーツを手に入れことを憧れとしていた。

ある日、マンガ雑誌かテレビ番組かで、正確な名前は忘れたが、ミニ四駆史上、最強のモーターが発売されるとの発表があった。実際にそのモーターを搭載したマシンが走っているところをテレビで目にしたが、思わず失禁してしまいそうなほど、速かった。あのモーターが欲しい。キッズたちの全員が、そう思ったものだ。
ただ、住んでいるのは、大阪でも都会とは呼べない街。近所の模型屋に、そんな流行のモーターなどが入荷するわけもなく。憧れが憧れのまま流れる日々が続いた。

話は変わって、小学生の頃は、校区なるものが定められていて、ここの道路から向こうは行ってはダメだよ、ヨソの学校の校区だからね、君たちキッズは、ここの道路からここの道路までの区間しか移動しちゃダメ、校区外に出るときは、マザーかファーザーと一緒にね。なんていうルールがありましたよね。

とある晴れた午後、親の用事に付き合うべく、親とともに校区を出て、大型スーパーへと向かった。我が小学校区の境界となる道路沿いには当時、イッコーホビーなる、模型屋さんがあった。位置関係でいうと、こちらの校区の境界があって、道路を挟み、イッコーホビーが向かいに見えている状態。親と大型スーパーに向かう際、そのイッコーホビーの店内にチラッと目をやると、ミニ四駆のセットが数台、売っているのが目に見えた。「へぇ。イッコーホビーって、ミニ四駆も売ってんじゃん!」という軽やかな印象を持った。

後日、友だち同士でミニ四駆の話で盛り上がっている最中、話はやはり改造のネタへと。あの軽量シャーシがヤバイとか、真鍮のギアにはグリスを塗りすぎるとダメだとか。そして話の中心は、例のモーターに。
友だちの中でも、不良とされている男の子が、やけに例のモーターの話をしたがるもんだから、僕は調べに調べたそのモーターの知識を披露。大いに盛り上がる。不良から賞賛される。心地良い。よっしゃ、話をもっと盛ってやろう!

そう考えたのが、悪夢の始まり。なんと僕は、不良からの賞賛欲しさに、「校区外にあるイッコーホビーに、例のモーターあるらしいよ」なんてことを口走ってしまったのである。不良は大喜び。喜び過ぎて、はしゃぐ、叫ぶ、そばにある物を破壊するの祭り状態。そして、僕への賞賛は、その瞬間、最高潮に達した。「ヤベッ……」とは思ったものの、イッコーホビーがあるのは校区外。僕たちキッズは、あちらへは行けないシステムだ。真相なんて確かめられるわけがない。まだ幼い僕の脳みそは、単純にそう考え、安堵していた。

ところが相手は不良。時にルールやマナーはもちろん、人として守らねばならない境界をも踏み抜いて行く人種。校区なんて知ったこっちゃあない。翌日、彼はなんのためらいもなく境界線を越え、イッコーホビーを訪ねたそうだ。そして、例のモーターの所在を確かめたそうだ。無かったそうだ。そりゃ、無いよ。チラッと目にした店内に、ミニ四駆が数台だけ売られているのしか、見てないんだもん。例のモーターなんて、あるわけないじゃん。

彼の怒りが沸点に達したのは、容易に察しがつく。翌日、僕の目の前に現れたのは、数日前、喜々として僕を賞賛してくれていた彼ではなく、猛り狂ったガタイのいい、荒くれ者のただの不良だった。お察しの通り、シバかれた。首を締められた瞬間、恐くてすぐに泣いた。失禁しそうになった。ちょっと、失禁した。

こんな経験をしているにも関わらず、いまだに話を盛ることはやめられない。目先に待つ、より大きな笑いが欲しい。先にも書いたが、話を盛ることは、ジェンガのブロックを高く積む如くの行為。その話を支えているブロックが外れたときの崩壊のリスクも描いておかねばならない。そうならないための防御策は、最低限、モーターが本当に売っているかどうかだけは、事前に確かめておくことだ。

デタラメだもの。

20160716

珍しく乗ってみようと思った流行に、乗り損ねると大怪我をするよ。『デタラメだもの』

流行に敏感な人というのは、ほんと、感心してしまう。だって、今何が流行っているのか、次は何が流行るのかという情報源に対し、アンテナを張り、常に敏感に意識しているということだもんね。性格的に、そんなマメなことは、ようできないため、いつだって流行には取り残された自分がいる。

まあ、どこか斜に構えた生き方をしている自分みたいな人間にとっては、「流行なんか取り入れるなんて、生き様に反してるわ」と強がってしまえば済むわけで、これまでもずっとそうやって生きてきたもんで、だから、殊更、流行を意識して生きようなんざ思っちゃいないが、時に、流行モノを欲してしまう瞬間というものがあるから、困り者。

そう、今、それが、電子タバコ。

近頃、巷で大ブームを巻き起こしているアレ。火を使うことなく、たばこを加熱して味わうというアレ。今まさに、自分の中で、遅ればせながらの大ブームが到来しているのである。

例の電子タバコを人々が持ち始めた頃は、「こんなまがいもんに手を出してまで吸うくらいやったら、タバコなんて、やめてしもたらええねん……」と悪態をついていた。だって、「僕、意識高い系の男子ですねん」というようなオーラが胡散臭く、よくもまあ、堂々と街なかでこんなもん吸えるなあと、多少、見下した感でその景色を眺めていた。
ほら、あれ、携帯電話本体を耳にも付けず口元にも寄せず、イヤホンとマイクを使っておしゃべりしている連中がいるじゃあないの。あれと一緒。あれも、周りからすると、アホの極みやと思われてるよね。白昼堂々、ひとり言を愉快痛快大声でしゃべり倒しているおかしな奴だと、一瞬思うよね。そう思われてるのを知ってか知らずか、堂々と例のアレを活用している連中というのは、もはや、世捨て人やで。最先端や思うてるんやろか? 意識高い系や思うてるんやろか? 頭のおかしい人間やと周りが思っていること、知ってはるんやろか?

まあ、早い話が、あれと一緒で、電子タバコもイキった連中が持つイキりアイテムだと感じていたわけさ。それがどうしたことか、職場の後輩の中でも、最も意識が低い系のメンズが、例のアレ、電子タバコを買っちゃったじゃあないの。
しかも、「先輩も一緒に買います? 最近、人気で、在庫ほとんどないらしいですよ?」なんて、声までご丁寧にかけてくれちゃって。

「そんなもん、要らんわい!」

と一喝。俺様を誰様やと思うとるんじゃい。あえて流行の逆に歩を進めるような無頼者やぞ。そんなもん、ワシに薦めてくれるな若造よ。

そうやって意地を張っていたのもつかの間。後輩に何度か試し吸いさせてもらっているうちに、「これ、ええやん……」。灰が出ないから、散らかすこともない、「これ、ええやん……」。煙のニオイもない、「これ、ええやん……」。普通のタバコと比べて、タールがほとんど含まれていない、「これ、ええやん……」。

そして、「これ、欲しひ……」、となったわけである。

が、しかし、その後、家電やサブカルに強い影響力を持つ某トークバラエティ番組で、例のアレの特集が組まれたり、インターネット大手検索エンジンのニューストピックスにデカデカと記事が掲出されたりで、世間の注目が一気に集まり、瞬く間に巷から、例のアレが姿を消した。

なんじゃい! こっちが欲しいと思ってやった途端、手のひら返すんかい! せっかく買ってあげよ思うてんのに、そっちから逃げて行くんかい!

そう吠えてみたものの、一度火がついた衝動(電子タバコは火がつかないタイプの煙草ですが)は抑え切れず、寄るタバコ屋、寄るコンビニ、どこへ行こうが、「例のアレ、置いてる?」と、キザに確認してまわり、「ないっすね!」「余裕で、ないっすね!」「あるわけないっすね!」と、どこの店でも軽くあしらわれ、そうなると人間、ますますそれを欲する熱情が増し増して、ぐぬぬ、アホウと思い、先の後輩に、「お前、それ、どないやって買ったんじゃい!」と、鼻から焦りの煙をモウモウと吹き出しながら詰問。すると後輩、「僕が買ったころは、まだタバコ屋に、普通に入荷してましたもん。だから先輩に声かけたんじゃないっすか、あの時! 僕が買った日も、まだ三台くらい在庫あったのに!」と、流行に対してのスロースターターを追い詰める態度を取られる始末。

こんなんでメゲてられるかい。そう思った僕は、懇意にしているタバコ屋のご主人に、「例のアレ、次、いつ入荷しますのん?」と尋ねてみた。
すると、「今、ブームやからねぇ。次の入荷は分からんわ。まぁでも、一過性のもんやから、そろそろ落ち着くんやない? 半年くらいのスパンで見たら、涼しい顔して手にできるよ」と。

「半年……」

もう、流行とかどうでもいいんですわ。灰が出ないとか、タールが少ないとか、もうそんなんどうでもいいんですわ。欲したものが手に入らない、どこに行っても手に入らない、そのジレンマを解消したいだけなんですわ。
夢は叶う、とか、偉人さん、よう言いはりますよね。でも、僕の夢は叶わないんですわ。少なくとも、今、僕の手では、叶えることができないわけです。そんな気分で、いつものタバコを吸っていると、灰はボロボロ落ちるわ、ヤニのニオイは強烈やわで、なんか、とっても惨めな気分に。

流行って、それに乗るのがダサイと感じていた頃もあった。それなのに今、流行に乗ろうとして一歩を踏み出したくせに、流行に混ぜてもらえなかった自分がいる。素直に流行に身を任せている人のほうが、なんぼか美しい。なんぼかスマートだ。

こんなことを言うのは失礼かも知れないが、甲子園を目指して、夜な夜な家の前で素振りの練習をする高校生がいる。さぞ、甲子園に行きたいのだろう。もしかしたら、甲子園に行くのは夢の途中で、その後、プロになって活躍し、メジャーに行って大記録を打ち立てたいと、毎日毎日、スイングを続けているのかも知れない。その憧れたるや、相当のものだろう。
しかしだね、僕が電子タバコを手にしたいという憧れも、決して君に負けてやしない。僕だって、君がバットを振る回数くらい、タバコ屋やコンビニを巡っている。僕のバットにボールが当たることはない。いつだって空振りだ。そのストレスで、普段吸っている、マールボロメンソールライトの摂取量は、平常時の三倍近くなってきた。高校生よ、いつか僕がホームランを打つその一球、ピッチャーの球種はロー、つまりは、低めの球だろう。だって、電子タバコに、灰、はないんだもん。くだらん。僕が手にする栄光に、タールは少ないが、エールはきっと多い。くだらん。

さあ、次はどこを攻めようか。きっと、戦国時代の武将たちも、こんな風にして、次の戦に胸を躍らせていたに違いない。もはや、侍だ。早う、刀が欲しい。火を使わず、加熱するタイプの刀が欲しい。ぐぬぬ。

次のタバコ屋には、例のアレ、なんだか置いてそうだぞ。第六感がそう叫んでいる!
心の中で、「ヨシッ!」と気合を入れながら、通りの向こう、タバコ屋に攻め入るべく、横断歩道へと一歩を踏み出した。

デタラメだもの。

20160703
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