デタラメだもの

デタラメに生きる。デタラメに暮らす。薄暗い世の中をデタラメに生きるための処世術、バイブル。エッセイです。

2013年09月

身体は健康でいることに越したことはないと思う。『デタラメだもの』

幸か不幸か、先日、ひょんなことから右手の甲に、バキバキッとヒビが入ってしまいまして、ミズノの野球グローブかいと思うくらいに腫れてしまいまして、晴れてケガ人ということに相成り。

ヒビ程度ならば、「別に痛みくらい耐えれるわん、ふふふん」と、日常生活を我慢して過ごすこともできなくもないと思う反面、巷でよく聞く、

「ちゃんとお医者様に見てもらえへんかったがために、骨が変にくっついてしもて、治った後も、元通りに手や指が動かんようになってしまうこと、あるらしいで」

そんな真夏の夜の怪談話よりも、リアリティーのある恐怖話に、元来のチキン精神から、ここは一度、お医者様に見ていただこう、そうしようということで自己解決し、いざお医者様へ。

さすがお医者様は心優しい方なので、道端に落ちている犬の糞のような僕みたいな人間にまで、とてもとても手厚く処置してくれるもんだから、病院を出た後には、これは見事といわんばかりの、包帯姿に。

ヒビなので、さすがにギプスまではしなかったものの、副木をあてがい、包帯やらガーゼやらをグルグル巻きにしていただき、これは何時何処で誰に襲われたとしても身を守ってくれるわいと、町中を悠々と闊歩して練り歩きたくなるくらいの仰々しさ。

そうして、僕は、あるひとつの事柄を失ってしまったわけです。

それは、普通に日常生活を営む、自由。

こんなにも右手がガッチリと固定されてしまって、中指、薬指、小指は、ひと束にまとめられ、包帯の渦の中。
病院に来るまでは、痛いながらも耐えつつ、日常生活を営んでおったにも関わらず、こうなってしまっては、もう、繊細な行為も大胆な行為も、密やかな行為も自慰行為も、なにもかもできなくなるわけである。

そう、お箸さえ、持てまい。

まあしかし、そこは元来の能天気精神により、

「これを機に、左手の動きの精度を上げて、時には左利きのように振舞ってやろうかしらん」

などとルンルンしてはいたものの、自分の仕事が、両手をフルに使いこなし、音楽で使用する方じゃ決してないキーボードと呼ばれる、板の上に四角いボタンが無数に付いていて、パチパチやると、眼前のモニターと呼ばれる画面に、文字などをやたらめったら浮き出させる作業、または、ネズミじゃ決してない方のマウスと呼ばれる、東京バナナみたいな形状の物体に右手を置きやり、スイスイと滑らせながら、これまたモニターの中に、お絵かきをしたりという作業。

自分は、そういった作業を日々繰り返して、おまんまを食べているのだということに気づき、

「この手じゃ、おまんま、喰えん…」

ということに相成るも、そこは元来の不屈の精神により、左手一本キーボード入力法やら、左手介添えマウス操作法やら、副木利用タイピング法やら、独自の処し方を次々に編み出しながら、普段よりも五十分の一くらいのペースで、チビチビと仕事を進める。

そうやって、文字を一文字入力することの喜びなどを噛み締めながら仕事をしていると、

「ちょっと、資料作ってくれやー」
「○○日までに、例の開発お願いします」
「スケジュール的にはどんな感じですか?また教えてください」
「とりあえず明日までに作ってくれ」

などと、次から次へと、容赦ない要求が。
どうやら、社内の人間は、味方ではなく、鬼のようである。
こんなにも仰々しい包帯をグルグルに巻いた人間にも、普段通りの容赦ない要求が浴びせられ、心の中では、

「この人たちは、例え僕が余命半年である旨を告げたとしても、何ら変わらず、その要求の手を休めることはないのだろう」

とブツクサ。

日本人は仕事のことしか考えてやがらねえから、怪我やら病気やらしたとしても、働いて働いて、身体がボロボロになろうとも働いて、精神がボロボロになろうとも働いて、それが常識とされているのかしらん。ふん。くだらん。

そんな風に卑屈になりながら、オフィス街をプラプラしていると、意外にも、腕を骨折しているサラリーマンを、チラホラ見かけることに気づく。

「なんだ、みんな、やっぱりサラリーマンでも骨折したりするんよね、みんな仲間よね!」

と、それまで鬱屈していた気分も吹き飛び、交差点などですれ違う骨折しているサラリーマンなどとは、怪我をしていない方の手でハイタッチでもしたくなるくらいの仲間意識。

そうやって明るい気分でやり過ごすも、ふと、あることに気づく。

この人たちは、手厚く処されたギプスやら包帯やらのまま、何事もないように日常の社会人生活を送っているようだ。
この人たちの勤める会社では、手やら足やらを怪我したら、きっと、無理するなよとか、俺が変わりに仕事やってやるよとか、資料の提出は来週でもいいからなとか、そういう優しい言葉をかけてもらったり、仕事のフォローをしてもらったりしてるのだろう。

だから、こんな風にして、手厚く処置されたままの姿で、こうやって今、オフィス街を練り歩いたり、笑顔を見せながら生活できているのだろう。

こんな風に、仲間意識ができた骨折仲間に対しても、卑屈になる理由が、ある。

それは、副木及び包帯及びガーゼ類での固定が20日間必要と診断されたにも関わらず、社内からの容赦ない所用の要求やら、もちろん止まることのない日常の仕事のあまりの多さから、こんな手じゃ仕事が何ひとつ間に合わないという理由により、たったの二日で、固定を外し、血色悪く、ブクブクと腫れた右手で、仕事をせねばならない、この身分。
包帯をしたまま、オフィス街を笑顔で練り歩くことさえできない、この身分。

なんなんだ、この身分の違いは。

とまあ、僕のように、底辺に生息する人間は、病気や怪我をしたとしても、誰一人の情けやら心配やらも受けずに、「怪我、それは罪である!」と突きつけられ、ズキズキと痛む身体でもって、職務を全うし続けねばならないのは、元より承知の上である。

だから、今日も、よどんだ表情で、オフィス街を練り歩く、そんな毎日。

デタラメだもの。

20130914

不運な大雨で足止めを喰らいながらも、浮かぶ餓鬼たちの顔。『デタラメだもの』

こんな風にフラリフラフラと仕事なんかをしていると、打ち合わせという名の下に、東京へとお呼ばれすることも、まれにある。

先日も、ふいとお呼ばれしたもんだから、ではぜひぜひお伺いいたしますと承諾し、慣れぬ都、東京へと足を運び、何度来ても路線が複雑過ぎて落ち着かんわなどとほざきながら、慣れぬ標準語に脳波をかき乱されながら、無事に打ち合わせというやつを終了させてきたわけである。

仕事というやつは、なぜにこうもギリギリのスケジュールで皆さん動くのかしらん、もっとのんびり、もっと事前に動きゃ、ミスも減り、不毛な緊張やら怒号も減るだろうにと思いもしなくはないが、そこは日本人、ストイックに自分たちを追い詰めて、息苦しい中で生きるのがお好みなのだろう、例にも漏れず、特段ゆっくりもできずに、足早に東京を後にしなければならないスケジュール感。

そうして早々に、大阪へ帰らんと、品川駅へと戻り、指定席を予約して、嗚呼、早く座席に座り込み、後ろの乗客の方に気をつかいながら、リクライニングシートをソロリソロソロ倒してやって、缶ビールなんかをプシュッとやりたいもんだと、新幹線の発車予定の書かれた電光掲示板に目をやってみると、なんとまあ、驚愕。

大雨の影響で、大阪へ向かう新幹線が、全て運休しているだと。

こうなるともう、精神状態は平生ではおれなくなり、狼狽狼狽。
こんなにも遠方に今自分がいて、そうして、住み慣れた町へと帰る手段が、消滅してしまっていると実感するや否や、果てしなく心細くなり、しばし呆然と電光掲示板を見つめ続ける。

「5秒間瞳を閉じて、再び電光掲示板を見やると、運休が解除されてるはずや」

などと、子どもの頃に、自転車のペダルを思いっきりグンッと漕いで、そのまま足をペダルに乗せたまま惰性で進み、その余力のまま、次の信号まで行けたら、○○ちゃんと付き合える!といったような、幼い神頼みにも似た感覚に縋り、ゆるり瞳を開いてみると、相も変わらず、運休。

ここまで心細くなっては、どうにもいかん。大阪に戻りたくてしゃーない。何が何でも大阪に戻ってやる。

そう固く決意し、運休が解除されるのを信じつつ、品川駅付近の居酒屋でビールなどやりながら時間を潰していると、意外に早く運転再開の吉報が。

ほらほら、日頃の行いがこうも悪くとも、ここぞという時には、ツキが回ってくるじゃんかと、母を訪ねて三千里旅してきた末に、母に出会えたキッズのように、満面の笑みを浮かべながら、品川駅へと帰還。

無事、指定席を確保するも、てめぇの指定の電車なんか、生涯来やしねぇよ、このクソヤローと暴言を浴びせられているかの如く、電光掲示板が示す、新幹線の到着予定表には、大雨に乱されまくったダイヤが表示されており、何本前の電車やねん!ってやつが、ところてん形式に順次やってくるらしく、今自分が涙ながらに取得した新幹線なんてやつは、どうやら二時間半も遅れてやってくるそう。

そない待てるかいな!?そない待ってたら、大阪、なくなってしまうわい!

そう息巻きながら、駅員さんに懇切丁寧に相談。
大阪へと帰りあぐねている、こんなにも可憐で憐憫なおっさんの、生きる術を教えてくださいな。

すると駅員さん、

「指定席取られたお客様にこんなこと申し上げるのも、大変おかしな話なのですが、一番早く帰れる方法といたしましては、順次到着する新幹線の自由席に乗られて帰られるのが、最良の手段かと思われます」

この人は、知恵の実を召し上がられた人なのか、それとも仙人でいらっしゃるのかしらん、なんと的確に、なんと親切に、生きる術を授けてくれるのであろうか。そう思い、そう崇めながら、早速、自由席に乗って帰るべく、ホームへと舞い降りた。

すると、何のことはない、大勢の人間たちが、その知恵の言葉を授かっており、同じ手段で、新幹線に飛び乗ろうとしているのである。

ホームは人で溢れ、到着した新幹線には、まるでラッシュ時の大阪市営地下鉄御堂筋線の列車のように、ギュウギュウと押し合いへし合い、すし詰め状態になっているのである。

テレビでは見ることはあっても、生でこんな新幹線の光景を見たことは、初めてである。
ゆったりまったりと、くつろぎながら、高速移動してくれる高級な乗り物、それが新幹線。
ところが今、目の前にいらっしゃる新幹線は、なんとも人でごった返し、せわしなくこ狭い、不便な乗り物。

呆然とその新幹線を眺めていると、ふと解せぬことが頭に過ぎってきたもんだから、しばしその思いに耽りながら、時間をやり過ごす。

何が解せないかっていうと、盆休みやらなんやらで、乗車率が120%だか何だかを伝えるニュースの際の、インタービューを受ける子どもたちの振る舞いである。

あの嫌味な餓鬼たちは何なんだ、いったい。
裕福な家族だけが抜粋されてインタビュー受けてるのかしらん?どの餓鬼たちも、僕の薄っぺらい月給よりもはるかに多くのお小遣いなんぞを貰ってそうな面構えでいやがる。

そうして、こんなことを言ってのけるのである。

「今回はスペインに行けるので、とっても楽しみです!」

己は餓鬼のくせに、何を楽しみに生きとるんじゃい!僕が君くらいの年齢の頃には、道端に落ちてる小銭拾うて、駄菓子屋でチューイングガム買ったりが、最上の楽しみやったわい。

こんな奴もいた。

「パンダの○○ちゃんを見てきました!あんまりこっちを向いてくれなかったので残念だったですけど、そんな控えめな性格も、○○ちゃんらしい一面で、なのでとってもかわいかったです!」

パンダの性格を理解して、いけしゃーしゃーとしとる場合かい!そこは子どもらしく、パンダがこっちを向いてくれへんかったこと、めちゃくちゃ悔しがるとこちゃうん!?何を悟り顔で、パンダの性格の一面を語ってくれとんじゃい。

さらにはこんな奴。

「ヨーロッパに行ってきます!ヨーロッパの遺跡に興味があって!」

って、待てい!
餓鬼がヨーロッパの遺跡に興味持っていいんかい?
君たちの年齢で興味があることといえば、クラスの女子のスカートの中とか、女子の縦笛とか、最近ふくよかになってきた女子たちの胸元の膨らみやら、そんなことに興味を持つのが普通やろがい!
それを、遺跡て…。

果てには、こうである。

「お盆は海外でゆっくり過ごします!」

って、お前、いくつやねん!
あと60年も歳とったら、せかせかもできず、嫌でもゆっくり過ごさざるを得なくなるわい!何を今から、夏休み、ゆっくり過ごしてくれとんねん!晩年に述べよ、そんなセリフは!今は、時間を余すことなく遊べよ、餓鬼よ!

と、そういや自分は、あのインタビューを見るたんびに、テレビに映る餓鬼に向かって、豪腕豪速150km/hの直球でもって、ツッコミを入れているなあ、自分は餓鬼相手に、何て器の小さな人間なんだろうか、寛容さのカケラもない、まったくもって仕上がりの悪い大人だ、不良品だ、下衆の極みだ、貧乏暇なしの人生、海外にすら行ったことないくせに、嗚呼、こんなだから、大雨に足止めされるんだ、例え新幹線は運転再開したとしても、自分の人生の行く末は断たれとるがな。

などとふさぎ込みながらも、次にホームにやって来た新幹線に、フラリフラリと吸い込まれ、決して快適とは言えない空間の中、我が町大阪へと帰還するのであった。

デタラメだもの。

20130907
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